当院では、鼓膜用レーザーとテルダーミスという人工皮膚材を用いて、鼓膜穿孔閉鎖術を行っています。短時間に行える低侵襲の方法で、手術というより処置といった方が適切かもしれません。 手術は、診察椅子に座ったまま行い、麻酔開始から手術終了まで20分程度です。
- (1) まず、麻酔液を浸した綿球を鼓膜の上に置き、10分間待って頂きます。
- (2) 次に、鼓膜用レーザー装置を使って鼓膜穿孔縁を焼却します。
- (3) 最後に、鼓膜穿孔を人工皮膚剤・テルダーミスで塞いで、終了です。
手術のあと2か月程度で、穿孔縁から鼓膜が伸びて、穿孔が次第に小さくなり塞がっていきます。その間、2~3回通院して頂くだけで、頻回の通院は必要ありません。1回の手術で閉鎖しなかった場合でも、穿孔は縮小しますので、手術を繰り返すことで閉鎖が期待できます。
従来の手術方法では、耳後部皮下から採取した組織を生体用接着剤で鼓膜穿孔部に貼り付けます。耳後部皮膚を切開するため、創部の術後処置、抜糸などが必要です。
人工皮膚剤を用いる方法は、皮膚切開がいらず、生体用接着剤による処置も不要で、手術時間も短くてすみ、術後の処置もほとんど必要ありません。手術成績、閉鎖率は穿孔の大きさで異なりますが、およそ7割で、従来の方法と同程度です。
手術費用は3割負担で5千円程度です。
優れた手術法ですが、外耳道が狭すぎる場合は出来ませんし、真珠腫性中耳炎による鼓膜穿孔も対象となりません。鼓膜に穴が開いていると言われている方は、一度ご相談下さい。
過去5年間の閉鎖術成績
平成26年からの5年間に行った閉鎖術は168耳でした。その結果を下図に示しています。
閉鎖成功率は116耳/168耳(70.2%)でした。鼓膜穿孔が小さいほど、閉鎖成功率は高い傾向がありました。
閉鎖するまでに要した手術回数は、1回(51%)、2(29%)、3回以上(20%)でした。
1回の閉鎖術で閉じなくても、複数回の閉鎖術で閉じた例も半数ほどありました。